「このラグ、本当に気持ちいいよね」と笑顔で言ったのは、大学4年生の美咲だ。週末の午後、彼女のアパートに集まった4人は、リビングに敷かれた大きなシャギーラグの上でくつろいでいた。
「ほんと、このラグに寝転がると、なんだか子供の頃に戻ったみたいな気分になるよね」と、同じゼミの健一が応える。窓から差し込む陽光が、ラグの柔らかな毛並みを優しく照らしていた。
「みんなで集まってこうしてるの、もうすぐ終わっちゃうのかな」と、美咲の親友の莉子が少し物思いにふける様子で呟いた。来春からそれぞれが違う道を歩み始める4人。だからこそ、今この瞬間が愛おしく感じられた。
「そんな終わらないよ」と、健一の親友の太郎が力強く言う。「確かに就職先は違うけど、こうやって集まることはできるでしょ。それに、LINEだってあるし」
ラグの上で輪になって座る4人は、これまでの思い出話に花を咲かせた。1年生の時の顔合わせコンパでの出会い、2年生での合宿、3年生でのゼミ発表、そして今年の就職活動。喜びも苦労も、すべてを分かち合ってきた仲間たち。
「私ね」と莉子が切り出した。「将来は自分のカフェを持ちたいの。まずは来年から始める会社で経験を積んで、5年後くらいには」彼女の目は輝いていた。
「それなら、僕がインテリアデザインを手伝えるよ」と健一が即座に返す。建築設計の会社に内定が決まっている彼らしい発言だった。
「私も週末はバリスタとして手伝うよ！」と美咲が声を上げる。「もちろん、経理の仕事もね」
太郎は黙って聞いていたが、やがて「俺は食材の仕入れルートを開拓する手伝いができるかも。商社で働くんだし」と真剣な表情で言った。
誰かの夢が、みんなの夢になっていく。そんな不思議な空気が、ラグの上に漂っていた。
「じゃあ、みんなも話してみよう。将来どんな自分になりたい？」と莉子が投げかける。
健一は「僕は、環境に優しい建築を広めていきたいんだ。自然と調和する建物って、きっと人の心も豊かにできると思うんだ」と熱く語る。
美咲は「私は、数字を通じて人々の暮らしを支えたい。会計って、ただの数字じゃなくて、その向こうにある人の生活や夢を支えるものだと思うから」
太郎は少し照れくさそうに「俺は、日本の農産物を世界に広めたい。この国の食文化の素晴らしさを、もっと多くの人に知ってもらいたいんだ」
話し合いは深夜まで続いた。時には真剣に、時には冗談を交えながら、それぞれの描く未来像を語り合う。誰かが持ってきたお菓子の袋が空になり、温かい茶が何度も注ぎ足された。
「なんだか不思議」と美咲がつぶやく。「それぞれ違う道に進むのに、どこかでつながっている気がする」
「そりゃそうだよ」と太郎が答える。「俺たちは仲間だから。これからも互いの夢を応援し合える、かけがえのない仲間なんだから」
健一が「このラグの上での約束だからね」と笑いながら言うと、全員で笑い声が響いた。
深夜、帰り際になって莉子が「また集まろうね」と言った時、誰もが迷わず頷いた。それは単なる社交辞令ではなく、本心からの言葉だった。
このラグの上で交わされた夢と約束は、きっと未来へと続いていく。4人はそう確信していた。それぞれの道を歩みながらも、互いを想い、支え合える関係。それこそが、かけがえのない宝物なのだと。
月明かりに照らされたラグの上で、4人の青春の1ページが静かに綴られていった。これは終わりではなく、新しい始まりの物語。彼らの夢と友情は、これからも続いていくのだから。
「また来週も集まろうよ」
「うん、約束だよ」
「今度は私が料理作ってくるね」
「俺も何か持ってくるよ」
最後まで尽きることのない会話と笑顔。このラグの上での時間が、彼らの人生にとってかけがえのない思い出として刻まれていくことを、誰もが感じていた。そして、これからも続いていく彼らの物語は、まだ始まったばかり。夢に向かって歩み出す4人の未来は、きっと眩しいものになるはずだ。
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