ラグの上で転がる犬と、散らかったままの幸せ

Uncategorized

Uploaded Image

うちのリビングには、3年前に買った大きなラグが敷いてある。

グレーとベージュの幾何学模様で、買った当初は「北欧風でおしゃれ」なんて思ってたんだけど、今となってはもうその面影もない。端っこはゴールデンレトリバーのマックスが噛んでほつれてるし、中央あたりには誰がこぼしたのかわからないコーヒーのシミがうっすら残ってる。でもこのラグ、なぜか家族全員が集まってくる場所になってしまった。

ソファもダイニングテーブルもちゃんとあるのに、気づくとみんなラグの上にいるんだよね。夕方6時過ぎ、仕事から帰ってくると大抵そんな光景が広がってる。娘は宿題を広げて寝転がってるし、息子はゲーム機を握りしめて座り込んでる。妻はクッションに背中を預けながらスマホで何か見てて、その真ん中にマックスがどーんと陣取ってる。誰も「ここに集まろう」なんて言ってないのに。

マックスがこの家に来たのは2年前の春だった。当時まだ子犬で、家中を走り回っては物を倒してた。最初の1週間は正直後悔したよ。夜中に遠吠えするし、スリッパは全部噛まれるし。でも不思議なもので、あいつがラグの上で寝転がり始めてから、家族の動線が変わった気がする。犬を撫でるためにラグに座る。座ったらそのまま居心地がよくてダラダラする。そんな感じ。

そういえば去年の夏、友達の家に遊びに行ったときのことを思い出した。めちゃくちゃ綺麗なモデルルームみたいな家で、白いソファに白いラグ、観葉植物も完璧な配置。「素敵だね」って言ったら、友達が苦笑いしながら「でも誰も座らないんだよね、汚れるから」って。なんか、それ聞いて少し切なくなった。うちのラグなんてシミだらけなのに…いや、だからこそなのかもしれないけど。

休日の朝はもっとひどい。というか、もっといい。朝9時頃、誰かが起きてきてラグに座る。そうするとマックスが尻尾を振りながら近寄ってくる。その音で次の人が起きてくる。気づけば全員がパジャマ姿でラグの周りにいて、テレビもつけずにぼーっとしてる時間がある。妻がコーヒーの匂いを漂わせながらキッチンから戻ってきて、私の隣に座る。娘がマックスの耳を触りながら「今日何する?」って聞く。息子は相変わらず半分寝てる。

このラグを買ったとき、家具屋の店員が「フィンランドのデザイナーが手がけた『ノルディア』シリーズです」なんて説明してくれたんだけど、今となってはそんなブランドどうでもよくなってる。大事なのはこの感触と、ここに座ると感じる安心感みたいなものだ。硬すぎず柔らかすぎず、冬はほんのり温かくて、夏はフローリングより涼しい。

たまに妻が「そろそろ新しいの買おうか」って言うんだけど、家族全員が微妙な反応をする。娘は「えー、このラグ好きなんだけど」って言うし、息子は無言で反対の意を示す。マックスに至っては意見すら言えないけど、多分こいつも反対派だと思う。自分の匂いがついた場所って、犬にとっては大事らしいから。

平日の夜、疲れて帰ってきてこのラグに座ると、一日の緊張がふっと抜けていく。靴を脱いで、スーツを脱いで、ネクタイを放り投げて、ラグの上にごろんと横になる。マックスが顔を舐めにくる。娘が「お父さん臭い」って言いながらも隣に座ってくる。妻が「夕飯できるまであと10分」って声をかけてくる。

このラグがなかったら、うちの家族はどんな配置で暮らしてたんだろう。多分それぞれが自分の部屋にこもって、食事のときだけテーブルに集まる、そんな感じだったかもしれない。別に悪いことじゃないけど、今のこの、理由もなく同じ場所にいる時間は、多分もう二度と戻ってこない。

子どもたちはいずれ家を出る。マックスだっていつか年をとる。このラグもそのうちボロボロになって、さすがに捨てざるを得ない日が来るんだろう。でも今は、シミもほつれも全部含めて、このラグが家族の真ん中にある。それだけで十分だと思ってる。

掃除機をかけるたびに、ラグの下から出てくるものがある。ヘアゴム、犬のおもちゃ、お菓子のかけら、誰かが落とした小銭。生活の痕跡ってやつ。汚いっちゃ汚いんだけど、これが案外悪くない…って最近思うようになった。

組織名:株式会社スタジオくまかけ / 役職名:AI投稿チーム担当者 / 執筆者名:上辻 敏之

コメント

タイトルとURLをコピーしました