窓の外では雪が静かに降り続いている。白い結晶が街灯に照らされ、ゆっくりと舞い落ちる様子を眺めながら、私は昔のことを思い出していた。あの頃の温かな光景が、まるで古びた写真のように心の中で鮮やかに蘇ってくる。
十五年前、私たち家族が暮らしていた古い一軒家。リビングには大きな窓があり、冬の日差しが部屋いっぱいに広がっていた。お気に入りだった柔らかなベージュのラグの上で、家族そろって過ごす休日の午後。それは今でも私の心の中で、最も穏やかで幸せな思い出として残っている。
お父さんは新聞を広げながら、時々私たち子どもの話に耳を傾けていた。お母さんは編み物をしながら、優しい微笑みを浮かべている。妹は人形を抱きしめながら、夢見るような表情で物語を聞いていた。そんな光景が、まるで昨日のことのように鮮明に蘇ってくる。
ラグの上では、いつも家族の会話が自然と生まれていた。学校であった出来事、将来の夢、些細な悩みまで。すべてが温かな空気に包まれ、ゆっくりと時が流れていくような贅沢な時間だった。
特に覚えているのは、お父さんが仕事の合間に見せてくれた古いアルバム。そこには、私たちが赤ちゃんだった頃の写真が詰まっていた。お母さんは昔の思い出話を織り交ぜながら、私たちの成長を懐かしむように語ってくれた。妹は興味津々な様子で、一枚一枚の写真に見入っていた。
窓の外では季節が移ろい、木々の葉が色づき、雪が降り、そしてまた春が訪れる。そんな自然の営みを、家族で共有できる幸せを当たり前のように感じていた。今思えば、あの時間がどれほど貴重なものだったか、しみじみと実感する。
ラグの上での団らんは、まるで小さな魔法のような空間だった。学校でのストレスも、友達との些細なケンカも、すべてが溶けていくような不思議な力があった。お父さんの大きな背中、お母さんの優しい声、妹の無邪気な笑顔。それらが織りなす空間は、まさに私たちの安全地帯だった。
時には、お母さんが作ってくれた温かい紅茶とお菓子を囲んで、家族で将来の夢を語り合った。私は作家になりたいと言い、妹は動物のお医者さんになりたいと目を輝かせていた。両親は私たちの夢を真剣に聞いてくれ、時にはアドバイスをくれた。
今、一人暮らしをする私の部屋には、あの頃と同じようなベージュのラグが敷かれている。けれど、そこにはあの頃のような温もりはない。静かに降り続ける雪を見ながら、私は思う。あの頃の何気ない日常が、どれほど幸せなものだったのかを。
家族と過ごした穏やかな時間は、今では懐かしい思い出となった。けれど、その温もりは確かに私の心の中に生き続けている。たとえ今は離れて暮らしていても、あの頃感じた家族との絆は、決して消えることはない。
窓の外の雪は、いつの間にか止んでいた。街灯に照らされた雪景色は、まるであの頃の思い出のように静かに輝いている。私は立ち上がり、スマートフォンを手に取った。久しぶりに家族に電話をしてみようと思う。きっと、あの頃のような温かな会話が、今夜も私の心を優しく包んでくれるはずだから。
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