朝の光に包まれて

窓から差し込む朝焼けの光が、部屋全体をオレンジ色に染め上げていく。私たちが寝そべるラグの上にも、温かな光が降り注いでいた。休日の朝というのは、どこか特別な空気を纏っているものだ。普段は慌ただしく過ぎていく時間が、まるでスローモーションのように緩やかに流れていく。

彼の寝息が静かに響く。横たわる彼の横顔を見つめながら、私は昨日の夜のことを思い出していた。仕事帰りに待ち合わせて、いつものように近所のカフェで夕食を共にした。その後、彼の部屋で映画を観ることになり、気がつけば夜が更けていた。「もう遅いから、泊まっていけば？」という彼の何気ない一言で、こうして朝を迎えることになった。

ラグの柔らかな触り心地が心地よい。白とグレーの幾何学模様が織り込まれたこのラグは、彼が一人暮らしを始めた時に買ったものだと聞いた。「座り心地のいいものを選んだんだ」と話す彼の言葉どおり、確かに心地よかった。

朝焼けの光が少しずつ強くなっていく。カーテンを通して差し込む光は、まるでオレンジ色のベールのよう。その光の中で、彼の寝顔がより柔らかく見える。普段は仕事のストレスで眉間にしわを寄せがちな彼だが、今は穏やかな表情を浮かべている。

私は静かに身を起こし、窓際まで歩いていった。外を見ると、街並みが朝焼けに染まっていた。高層ビルの窓ガラスが光を反射して、まるで街全体が輝いているかのよう。早朝にもかかわらず、既に活動を始めている人々の姿も見える。彼らにとっては普通の朝なのだろうが、私にとってはとても特別な朝だった。

「起きてたの？」背後から彼の声が聞こえる。振り返ると、彼もラグの上で身を起こしていた。寝ぐせで少し乱れた髪が愛らしい。「うん、朝焼けが綺麗だから」と答えると、彼も窓際まで来て私の隣に立った。

しばらくの間、私たちは言葉を交わすことなく、朝焼けを眺めていた。彼の体温を感じながら、この瞬間が永遠に続けばいいのにと思う。でも、そんな贅沢な願いは叶わないことも分かっている。だからこそ、今この瞬間を大切にしたいと思う。

「コーヒー、入れようか」彼がそう言って台所に向かう。私は再びラグの上に座り、彼の背中を見つめる。コーヒーメーカーから立ち上る湯気と、珈琲の香りが部屋に広がっていく。この何気ない朝の光景が、私の心を温かく包み込む。

ラグの上に並んで座り、マグカップを手に取る。熱々のコーヒーから立ち上る湯気が、朝焼けの光に照らされてきらきらと輝く。会話は多くない。でも、この静けさが心地よい。時々交わす視線と微笑みだけで、十分に気持ちは通じ合っている。

外の喧騒が少しずつ大きくなってきた。日常が始まろうとしている。でも、このラグの上の時間は、まだしばらく続く。朝焼けは徐々に薄れていき、代わりに明るい陽光が差し込んでくる。私たちの影が床に伸びていく様子を眺めながら、この穏やかな朝の時間を噛みしめる。

やがて、私たちはそれぞれの日常に戻っていかなければならない。でも、このラグの上で過ごした特別な朝の記憶は、きっと長く心に残るだろう。そして、また次の休日を心待ちにする。あの柔らかな朝焼けの光の中で、穏やかな時間を共有できることを。