窓から差し込む朝焼けの光が、部屋全体をオレンジ色に染め上げていく。私たちは白いシャギーラグの上で寝そべったまま、その美しい光景を眺めていた。彼の温もりを感じながら、私は深いため息をついた。心地よい静けさの中で、時間がゆっくりと流れていく。
「ねぇ、この光を見ていると、まるで時間が止まったみたいだね」と私が呟くと、彼は優しく微笑んで頷いた。私たちがこうしてラグの上で過ごすようになったのは、去年の冬からだった。新しい家に引っ越してきて、まだ家具も揃っていない頃、とりあえず置いたこのラグが、いつの間にか私たちのお気に入りの場所になっていた。
柔らかな繊維が指先をくすぐる。天井を見上げながら、私たちは些細な日常の出来事や、将来の夢について語り合う。時には真面目な話をし、時には くだらない冗談を言い合って笑い転げる。このラグの上では、どんな会話も特別なものに感じられた。
朝焼けの光が強くなるにつれて、街も少しずつ目覚めていく。遠くから聞こえてくる電車の音や、早朝のジョギングをする人々の足音が、静かな空間に溶け込んでいく。彼は私の髪を優しく撫でながら、「今日も一日がはじまるね」とつぶやいた。
私たちは急いで起き上がる必要もなく、ゆっくりとこの時間を味わっていた。週末の朝は、特別な贅沢さを感じる。普段は慌ただしい朝も、今日は違う。ラグの柔らかさに身を委ねながら、私たちは互いの呼吸の音を聞いている。
「このラグ、最初は仮置きのつもりだったのにね」と彼が言う。確かにそうだった。引っ越し直後、とりあえず床が寒いからという理由で買った白いシャギーラグ。でも今では、このラグなしの生活は考えられない。ここは私たちの特別な場所になった。
朝日が昇るにつれて、影が少しずつ動いていく。窓辺に置いた観葉植物の影が、ラグの上でゆっくりと形を変えていく様子を眺めながら、私たちは静かに微笑み合う。時には言葉を交わさなくても、ただそうしているだけで幸せを感じられる。
「コーヒーでも入れようか」と彼が言った時、私は少し名残惜しそうに頷いた。でも立ち上がる前に、もう少しだけこの瞬間を味わっておきたくて、彼の手を握った。彼も黙ってその手を握り返してくれた。
朝焼けの光の中で、私たちの影が重なっている。この何気ない日常が、実は最も贅沢な時間なのかもしれない。忙しい毎日の中で、こうして二人でゆっくりと過ごせる時間は、かけがえのない宝物だ。
ラグの柔らかな繊維が、まるで私たちを包み込むように感じられる。この場所で過ごす時間は、いつも特別な魔法をかけられたようだ。日常の喧騒を忘れ、ただ互いの存在を感じ合える。そんな贅沢な時間を過ごせることに、心から感謝している。
やがて彼が立ち上がり、キッチンでコーヒーを入れ始める音が聞こえてきた。私はまだラグの上に残って、朝焼けの最後の輝きを眺めていた。この瞬間が、今日という一日の始まりを特別なものにしてくれる。そう思いながら、私もゆっくりと立ち上がった。
これから始まる一日も、きっと素敵な時間になるだろう。そんな予感を胸に、私たちの朝は静かに、でも確かな幸せとともに始まっていった。
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