リビングの大きな窓から差し込む朝焼けの光が、白いラグの上に淡いオレンジ色の模様を描いていた。窓の外では、夜が朝へと移り変わる瞬間を迎えようとしている。空気は静かで、まだ誰も目覚めていない街並みが、遠くに小さく広がっている。
私たちは柔らかなラグの上で寝そべったまま、その景色を眺めていた。彼の体温が心地よく、私の背中に伝わってくる。シンプルな白のカーテンが、微かな朝の風に揺れるたびに、光と影が私たちの上で踊る。
「こんな朝も悪くないね」と彼が囁く。その声は、まだ眠気を帯びていて温かい。私は小さく頷いて、もう少しだけこの時間を味わおうと思う。普段なら、この時間にはもう通勤ラッシュに身を投じているはずだ。でも今日は違う。二人で過ごす特別な朝。
ラグの柔らかな繊維が、私たちの肌を優しく包み込む。彼は私の髪を指でそっと梳かしている。その仕草には、まるで大切な宝物を扱うような慎重さがある。窓の外では、徐々に空が明るさを増していく。朝焼けの色は刻一刻と変化し、私たちの部屋に新しい色彩を運んでくる。
「コーヒーでも入れようか」と彼が言うけれど、私は首を振る。まだ動きたくない。この瞬間が永遠に続けばいいのに、と思う。彼の胸に耳を寄せると、規則正しい心音が聞こえる。その音は、私を安心させる子守唄のよう。
時々、外から鳥のさえずりが聞こえてくる。早起きの小鳥たちは、もう新しい一日を始めている。その声は、まるで私たちだけのための小さなコンサートのよう。彼は私の肩を抱き寄せ、より深く抱きしめる。
ラグの上に散らばった本や雑誌が、昨夜の私たちの時間を物語っている。夜更けまで、いろんな話をした。将来の夢や、子供の頃の思い出、好きな音楽や映画のこと。些細な会話の一つ一つが、私たちをより近づけてくれる。
朝日が少しずつ高くなり、部屋の中はより明るくなっていく。壁に掛けた時計の針は、ゆっくりと進んでいる。でも不思議と、時間の流れを気にする必要はないように感じる。今この瞬間だけが、私たちにとって大切な時間。
彼の指が私の頬を優しく撫でる。その温もりに、心が溶けていくような感覚を覚える。窓の外では、街が少しずつ目覚め始めている。遠くから聞こえてくる車の音も、まだ穏やかで静か。
「朝ごはん、何が食べたい？」と彼が尋ねる。でも返事をする代わりに、私は彼の胸にもっと身を寄せる。今はまだ、この瞬間を大切にしたい。朝食のことは、もう少し後で考えればいい。
ラグの上で過ごすこの時間は、まるで魔法にかけられたような特別な時間。日常の喧騒から切り離された、私たちだけの小さな世界。朝焼けの光が作り出す幻想的な空間の中で、私たちは静かに寄り添っている。
やがて太陽は完全に昇り、朝焼けの色は消えていくだろう。でも、この瞬間の温もりと安らぎは、きっと長く心に残るはず。私たちの関係も、このように少しずつ、でも確実に深まっていく。それは朝焼けのように美しく、そして心温まるものだ。
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