窓から差し込む柔らかな陽光が、リビングの床に敷かれたラグの上で優しい影を作っていた。薄いベージュ色のカーペットは、部屋全体に温かみのある雰囲気を醸し出している。私とヒロキは、そのラグの上で向かい合って座り、穏やかな時間を過ごしていた。
「このラグ、すごく気持ちいいね」とヒロキが言う。彼の声は、いつもより少し静かだ。「うん、そうなんだ」と私は答えた。このラグは祖母から譲り受けたもので、長い年月を経ているにもかかわらず、柔らかな肌触りは失われていない。
私たちは大学時代からの友人で、お互いの良き理解者として、これまで様々な時間を共有してきた。今日も仕事帰りに、何となくヒロキが私の部屋に寄ることになった。彼は最近、仕事で悩みを抱えているようだった。
「なんだか、このラグの上に座っているだけで心が落ち着くよ」とヒロキが呟く。確かに、このラグには不思議な魅力がある。座っているだけで、まるで優しく包み込まれるような感覚になる。窓の外では、夕暮れ時の風が木々を静かに揺らしている。
「お茶、もう一杯飲む？」と私が尋ねると、ヒロキは小さく頷いた。私は台所へ向かい、急須にお湯を注ぎ、茶葉の香りが立ち上るのを待つ。この何気ない時間が、私たちにとってどれほど大切なものか、きっと互いによくわかっている。
お茶を持って戻ると、ヒロキは窓の外を見つめていた。「最近ね」と彼が話し始める。「仕事のことで色々考えすぎちゃって」。私は黙って聞いていた。時には、ただ相手の言葉に耳を傾けることが、最高の励ましになることがある。
カーペットの上に置かれた湯呑から、かすかに湯気が立ち上る。その様子を見つめながら、ヒロキは少しずつ言葉を紡いでいく。新しいプロジェクトの責任者になったこと、チームメンバーとの関係に悩んでいること、自分の決断に自信が持てないこと。
「でも、ここに来て、このラグの上でお茶を飲みながら話していると、何だか気持ちが整理できてくるんだ」とヒロキが言う。私は微笑みながら「このラグには、そういう力があるのかもしれないね」と答えた。
外の空が徐々に暗くなっていく中、私たちは穏やかな時間を共有し続けた。時には言葉を交わし、時には沈黙を楽しむ。このラグの上での時間は、まるで日常から少し離れた特別な空間のようだった。
「ありがとう」とヒロキが言った。「こうして話を聞いてくれて」。私は「どういたしまして」と答えながら、この何気ない瞬間が、実はとても贅沢な時間なのだと感じていた。
カーペットの柔らかな触感と、夕暮れの優しい光。そして、信頼できる友人との静かな語らい。これらが織りなす穏やかな時間は、私たちの心を優しく包み込んでいた。
帰り際、ヒロキは「また来てもいい？」と尋ねた。「もちろん」と私は答えた。このラグの上での語らいは、これからも続いていくのだろう。そう思うと、何だか嬉しい気持ちになった。
夜風が窓を通して部屋に入ってきて、カーペットの上でそっと踊るように見えた。私は一人になった部屋で、今日の穏やかな時間を思い返しながら、このラグに感謝の気持ちを伝えていた。友人との大切な時間を、こうして静かに見守ってくれてありがとう、と。
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