窓の外は雨。小さな一人暮らしのアパートで、私は新しく購入したラグの上に座り込んでいた。引っ越してきて3ヶ月が経つが、まだ部屋には必要最低限の家具しかない。そんな殺風景な部屋の中で、このラグだけが唯一の贅沢品だった。
実は先週、大切にしていた観葉植物が枯れてしまった。日々の水やりを忘れていたわけではない。ただ、光が足りなかったのかもしれない。北向きの部屋は、植物を育てるには適していなかったのだ。その喪失感を埋めるように、私は家具屋でラグを見つけた。
最初は躊躇した。学生の身分で、ラグに3万円も使うべきだろうか。でも、触れた瞬間に心が決まった。短めのパイル地は適度な弾力があり、座っているだけで心地よい。化学繊維とウールを組み合わせた素材は、耐久性が高く、普段の掃除も簡単だ。何より、防ダニ・抗菌加工が施されているという点が、清潔好きの私の心を掴んだ。
経済的な観点から見ても、このラグは決して無駄な買い物ではなかった。確かに初期投資は大きいが、高品質な素材と丁寧な作りは長く使えることを約束してくれる。安価なラグを何度も買い換えるよりも、結果的には賢い選択だったと思う。
雨音を聞きながら、私はラグの上で膝を抱えている。柔らかな触感が、どこか懐かしい感覚を呼び起こす。子供の頃、実家のリビングにあった古いカーペットの感触に似ている。あの頃は、宿題をする時もテレビを見る時も、いつもカーペットの上だった。家族と一緒に過ごした温かな記憶が、このラグを通じて蘇ってくる。
部屋の空気も変わった気がする。ラグを敷く前は、フローリングの冷たさが部屋全体の印象を殺風景にしていた。でも今は、ラグが空間に温もりを与えてくれている。足音も吸収してくれるので、より静かで落ち着いた雰囲気になった。
掃除も思ったより簡単だ。週に一度の掃除機がけで十分きれいを保てる。汚れが気になる時は、専用のクリーナーで部分的に洗うこともできる。メンテナンスの手間を考えると、観葉植物よりもずっと気楽だ。
夜が更けていく。雨はまだ降り続いている。明日も一人で過ごす休日。でも不思議と、以前ほどの寂しさは感じない。このラグが、私の生活に小さな安らぎをもたらしてくれているからかもしれない。
時々、友人に「一人暮らしは寂しくないの？」と聞かれる。確かに寂しい時もある。でも、この部屋で過ごす時間は、自分と向き合う大切な時間でもある。ラグの上で本を読んだり、音楽を聴いたり、時には何も考えずにぼんやりと過ごしたり。そんな時間が、少しずつ私を強くしてくれている気がする。
窓の外で雨が小降りになってきた。明日は久しぶりに晴れるかもしれない。私はラグの上で深くため息をつく。この場所が、私の心の安らぎになっていることを実感する。たった一枚のラグが、殺風景だった部屋を、私だけの特別な空間に変えてくれた。それは、お金では測れない価値かもしれない。
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