朝陽が照らす、私たちの小さな幸せ

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がんばろ!

リビングの大きな窓から差し込む朝焼けの光が、部屋全体をオレンジ色に染め上げていく。私たちが一緒に選んだ白いラグの上で、彼は本を読みながら横たわっている。私は彼の隣で、スマートフォンでSNSをぼんやりとスクロールしているけれど、実は画面に映る文字も写真も、ほとんど目に入っていない。

彼の寝癖が可愛らしく跳ねている後頭部を見つめながら、昨日の夜のことを思い出していた。仕事帰りに待ち合わせて、いつものように手を繋いで帰る途中、突然の雨に見舞われた私たち。近くのコンビニに駆け込んで、傘を買おうとしたけれど、残念ながら売り切れ。結局、彼のジャケットを頭から被って、二人で走って帰ったのだ。

玄関に着いた時には、もう全身びしょ濡れだった。でも、お互いの顔を見合わせた瞬間、なぜだか笑いが止まらなくなって。シャワーを浴びて着替えた後、このラグの上で一緒にホットココアを飲みながら、たわいもない会話を楽しんだ。

「ねぇ」と私が声をかけると、彼は本から目を離して、優しい眼差しを向けてくれる。「なに?」という返事と共に、彼の手が自然と私の髪に触れる。指先で髪をとかすような仕草に、心が温かくなる。

窓の外では、朝焼けがますます鮮やかになっていく。街並みのシルエットが徐々にはっきりとしてきて、新しい一日の始まりを告げている。遠くで鳴る小鳥のさえずりが、静かな朝の空気に溶け込んでいく。

「今日は何をして過ごす?」彼が尋ねる。休日の朝なのだ。予定は特に決めていない。でも、それがまた良かったりする。「このままでいい」と答えると、彼は微笑んで頷いた。

ラグの心地よい肌触りと、彼の体温を感じながら、私は目を閉じる。朝日の暖かさが顔を撫でていく。この瞬間が永遠に続けばいいのに、と思う。でも、それは欲張りすぎかもしれない。だって、こんな素敵な朝は、これからもきっと何度でも訪れるのだから。

時々、窓を通り過ぎる雲の影が部屋を横切っていく。その度に光と影のコントラストが変化して、まるで誰かが照明を微調整しているかのよう。私たちの間には、心地よい沈黙が流れている。言葉を交わさなくても、お互いの存在を感じられる関係。それは、長い時間をかけて築き上げてきた信頼関係の証なのかもしれない。

彼の読んでいる本のページをめくる音が、時折静けさを優しく破る。その音すらも心地よく感じられる今。スマートフォンの画面はとうに消えていて、私は彼の呼吸の音に耳を傾けている。規則正しい息遣いは、まるで穏やかな波のよう。

外では街が少しずつ目覚めていく。遠くから聞こえてくる車の音も、この瞬間を特別なものにしている。平凡な日常の一コマかもしれないけれど、この何気ない時間こそが、きっと人生で最も大切な瞬間なのだと思う。

朝焼けは徐々に薄れていき、代わりに明るい青空が顔を出し始めている。でも、私たちはまだ動く気配を見せない。この心地よい空間に浸っていたい気持ちは、お互い同じみたい。彼の手が私の肩に回され、私は自然と彼の胸に寄り添う。

こうして過ごす休日の朝は、まるで小さな宝物のよう。慌ただしい日々の中で、ゆっくりと時間が流れていく贅沢な時間。それは、私たちだけの特別な空間であり、何物にも代えがたい幸せな瞬間なのだ。

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