青春のラグトーク

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夕暮れ時のアパートの一室で、古びた茶色のラグの上に4人の大学生が車座になって座っていた。窓から差し込む柔らかな光が、それぞれの表情を優しく照らしている。

「じゃあ、みんなは卒業後どうするつもり?」と切り出したのは、経済学部3年の田中だ。彼は膝を抱えながら、仲間たちの顔を見回した。

「私はね、やっぱり出版社に行きたいの」と即答したのは、文学部の佐藤美咲。彼女は子供の頃から本が大好きで、その夢を諦めたことはなかった。「自分で企画した本が書店に並ぶところを想像すると、今からわくわくする」

「それ、すごくいいじゃん!」と相槌を打ったのは、同じく文学部の山田絵里。「私は少し違って、フリーランスのライターになりたいの。世界中を旅しながら、いろんな人の物語を書き残していきたいの」

工学部の木村は黙って聞いていたが、ゆっくりと口を開いた。「俺は起業したいんだ。ITで人々の生活をもっと便利にできると思うんだ。でも正直、不安もある」

「それ、面白そう!」と田中が身を乗り出す。「俺も実は、コンサルタントになって、木村の会社みたいなベンチャーを支援できたらって考えてたんだ」

誰かが持ってきた温かい緑茶が部屋に香りを漂わせる中、4人の会話は深まっていった。それぞれの夢は違えど、互いの話に真剣に耳を傾け、時に相づちを打ち、時に質問を投げかける。

「でも、これって本当に実現できるのかな」と美咲が不安げに呟いた瞬間、絵里が力強く言った。「大丈夫よ。私たちには時間があるし、なにより、こうやって応援し合える仲間がいるじゃない」

古いラグの上で交わされる言葉には、若さゆえの不安と希望が混ざり合っていた。木村はスマートフォンを取り出し、メモを取り始めた。「みんなの夢、ここに記録しておこう。5年後に、また同じメンバーでここに集まって、どれだけ実現できたか確認しよう」

その提案に全員が賛同し、それぞれの目標と期限を書き出していく。真剣な表情の中にも、期待に胸を膨らませる様子が見て取れた。

「ねぇ、実は私、この古いラグにすごく愛着があるの」と美咲が急に話題を変えた。「大学1年の時に、みんなで初めて集まった時からここにあって、私たちの青春の証人みたいなものじゃない?」

確かに、このラグの上では数えきれないほどの会話が交わされ、笑い声が響き、時には涙も流された。レポートの締め切りに追われた夜も、就職活動の悩みを打ち明けた日も、すべてこのラグの上だった。

「そうだね」と木村が頷く。「このラグは俺たちの友情の象徴かもしれない。擦り切れても、シミがついても、みんなで過ごした思い出は消えない」

夜が更けていくにつれ、会話は将来の夢から、これまでの思い出話へと自然に移っていった。1年生の頭文字だけ書いた内緒の恋バナや、無謀にも挑戦した学園祭の出し物、夜通し語り明かした青春の日々。

「私たち、卒業しても絶対に連絡を取り合おうね」と絵里が提案する。「SNSだけじゃなくて、定期的にこうやって集まって、近況報告会をしよう」

「そうだね。でも次会う時は、みんながそれぞれの夢に向かって一歩でも前に進んでいることを約束しよう」と田中が真剣な表情で言った。

深夜を回り、メンバーはそれぞれの帰り道を急ぎ始めた。最後に4人は、このラグの上で撮った集合写真をスマートフォンに収めた。その写真には、未来への期待と、かけがえのない仲間との絆が詰まっていた。

部屋を出る前、美咲が最後にラグを優しく撫でた。「また会おうね」その言葉には、単なる物体以上の意味が込められていた。このラグは、彼らの青春の証であり、これからも続いていく友情の象徴なのだ。

帰り際、木村が言った。「考えてみれば、俺たちって本当に恵まれてるよな。こんな仲間と出会えて、一緒に夢を語り合えて」

その言葉に全員が深くうなずいた。それぞれの道は違えども、互いを思いやり、支え合える関係があることは、何物にも代えがたい財産だった。

玄関で別れを告げる時、4人は固く約束した。どんなに時が経っても、どんなに距離が離れても、この絆は決して切れることはないと。そして必ず、このラグの上で再会することを。

街灯に照らされた夜道を歩きながら、それぞれが今夜の語らいを心に刻んだ。若者たちの夢は、これから様々な試練に直面するかもしれない。しかし、この確かな絆があれば、どんな困難も乗り越えられるはずだ。

そう、このラグの上で交わされた約束は、彼らの人生の新しい章の始まりなのかもしれない。

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